分配器と分岐器の違い:テレビ電波を分ける仕組みと適切な機器の選び方

屋外用分配器と屋内用分配器

テレビアンテナで受信した電波を複数のテレビや機器で利用するためには、信号を分ける装置が必要です。それが分配器分岐器です。この二つは見た目が似ていますが、その役割と用途は大きく異なります。ご自宅の環境にどちらの機器が必要か、その違いを明確に解説します。


1. 分配器とは?:一般家庭で最も使われる「均等分け」

分配器は、アンテナからの電波を複数の出力端子に均等に分けるための装置です。一般の戸建住宅や、テレビを複数台接続したい場合に最もよく使用されます。

🏠 特徴と仕組み

  • 信号の均等分配:入力された信号を、2分配、3分配など、出力端子の数に応じて等しいレベルで送ります。
  • 信号の減衰:出力端子が増えるほど、各端子への信号の減衰量(dB)は増加します。例えば、2分配の場合、各出力で約4dBの減衰が発生します。
  • 主な用途:リビングと寝室など、複数の部屋で同時にテレビを視聴したい場合に使用されます。

2. 分岐器とは?:集合住宅向けの「枝分かれ」

分岐器は、主系統の幹線ケーブルの電波レベルを極力保ちつつ、一部の電波だけを枝分かれさせるための特殊な装置です。

🏢 特徴と仕組み

  • 出力レベルの差:
    • 主出力(OUT):幹線ケーブルを次の部屋へ送るため、減衰を最小限(約1dB程度)に抑えます。
    • 分岐端子(TAP):各部屋へ電波を分配する端子で、意図的に大きな減衰(約10dB程度)がかかります。
  • 主な用途:マンションやアパートなどの集合住宅や大型施設で、幹線ケーブルの末端まで信号品質を維持し、各部屋に電波を送り届けるために使用されます。
  • 一般住宅での利用:通常、一般住宅で使われることはありません。
💡 重要な違い:
分配器: 全ての出力で信号レベルは均等に弱まる。(戸建向け)
分岐器: 幹線ケーブルの信号レベルを優先して維持する。(集合住宅向け)

3. 沖縄での選定ポイントと配線時の注意点

沖縄の特殊な環境や、BS/CS放送の視聴環境を考慮した、分配器・分岐器選定のポイントです。

🌊 設置場所と耐久性

  • 屋外設置の場合:分配器やケーブルは、塩害・風雨に晒されると劣化が早まります。防水・耐塩害仕様の製品を選び、ケーブル接続部の防水処理を徹底してください。
  • 屋内設置の場合:壁内などに設置する際は、ノイズ耐性の高いモデル(特に基地周辺)を選定することで、安定した信号品質を保てます。

🛰️ BS/CS放送と給電

  • 全端子通電型:BS/CSアンテナ(パラボラアンテナ)は、コンバーターを動作させるためにテレビ側から電源(DC15V)を送る必要があります。アンテナへの電源供給を確保するため、分配器は必ず「全端子通電型」または、給電したい経路を通す「一端子通電型」を選定してください。
  • 4K/8K対応:新4K/8K放送(左旋円偏波)を視聴する場合は、3224MHzまで対応した分配器・分岐器が必要です。

4. まとめ:配線計画と信号減衰

テレビの映りが悪い原因が「分配過多」による信号減衰の場合、ブースターで信号を増幅する必要があります。

信号は、アンテナで受信してから、ブースター→分配器→ケーブル→テレビと進む過程で、常に弱くなっていきます。

特に分配器は、信号を物理的に分けるため、必ず減衰が発生します。安定した視聴のためには、アンテナレベルの診断と、ブースターの適正な設置をセットで検討することが重要です。