地上デジタル放送とは異なり、BS/CS放送は宇宙の人工衛星から電波を受信する特殊な放送です。ここでは、BS/CS放送が届く仕組み、電波の性質、そして快適な視聴に必要なパラボラアンテナの基礎知識をわかりやすく解説します。
1. BS/CS放送とは何か?:衛星放送の基礎
BS/CS放送は、人工衛星を経由して映像・音声信号を視聴者のアンテナへ届ける放送形態です。この衛星放送には、大きく分けて「BS」と「CS」の2種類があります。
✅ BS(Broadcast Satellite)放送
- 衛星:地上から約36,000kmの静止軌道上にある放送衛星(BS)から送信されます。
- 内容:NHK、民放各局の無料チャンネルのほか、有料チャンネルが放送されています。
✅ CS(Communication Satellite)放送
- 衛星:BSと同じ静止軌道上にある通信衛星(CS)から送信されます。
- 内容:主に専門チャンネル(スカパー!など)の有料多チャンネルサービスが中心です。
2. BS/CSの電波の性質と受信の仕組み
衛星放送の電波は、地デジのUHF帯電波とは性質が大きく異なります。その性質を理解することが、適切なアンテナ設置の鍵となります。
📡 BS/CS電波の性質(マイクロ波)
- 周波数:BS/CS放送は、地デジよりも遥かに高いマイクロ波(SHF帯)を使用しています。
- 直進性:電波の直進性が非常に強く、わずかな障害物でも遮られやすいという特性があります。
- 広範囲:一つの衛星から非常に広範囲に電波を送れるため、日本全国どこでもほぼ同じ強度で受信が可能です(ただし衛星の見える範囲に限る)。
📡 パラボラアンテナでの受信の仕組み
BS/CS放送を受信するために、パラボラアンテナは以下の役割を果たしています。
- 皿(ディッシュ):人工衛星から届いた微弱な電波を、大きな皿状の部分で集束させます。
- LNB(コンバーター):集束された電波を、アンテナ先端にある受信機(LNB:低雑音ブロックダウンコンバーター)でテレビに伝送しやすい周波数に変換します。
- 方向:衛星の位置は固定されているため、アンテナを特定の方向(主に南西方向)へ正確に向ける必要があります。
3. 安定受信のための注意点:地デジとの決定的な違い
BS/CS放送を安定して視聴するためには、電波の性質を理解し、特に障害物と天候に注意を払う必要があります。
⚠️ 設置方向と障害物の問題
- 方向:衛星放送の受信には、アンテナと衛星を結ぶ直線上に何も障害物がないことが必須です。
- 遮蔽:特に南西方向の視野を遮る高い建物、樹木(成長も含む)、ベランダの手すりなどが少しでもあると、電波が届かず映りません。
- 地デジとの違い:地デジの反射波を利用した受信は不可能で、電波塔方向への指向性は関係ありません。
🌧️ 天候(降雨減衰)の影響
BS/CS放送が使用するマイクロ波は、雨粒や雪などの水に非常に吸収されやすい性質があります。これを降雨減衰(こううげんすい)と呼びます。
- 視聴への影響:沖縄の激しいスコールや台風時など、大雨が降ると電波が弱くなり、映像がブロックノイズになったり、完全に映らなくなったりするトラブルが起こりやすくなります。
- 対策:大きなサイズのアンテナ(高感度)を選定するか、適切なブースターで信号を増幅するなどの対策が必要です。
4. 4K/8K放送への対応
近年増加している超高画質(4K/8K)のBS/CS放送を見るためには、従来のアンテナとは異なる機材が必要です。
💡 4K/8K対応アンテナの必要性
- 電波:4K/8K放送の一部は、従来のBS/CSよりもさらに高い周波数帯(左旋円偏波)を使用しています。
- 機材:この新しい電波を受信するためには、アンテナ、ブースター、分配器、ケーブル、そしてテレビの全てが「4K/8K対応(3224MHz対応)」である必要があります。
→ 次のステップ:BS/CSアンテナの種類と設置のページで、最適なアンテナ選びと設置方法を詳しく確認しましょう。