BS/CS電波とアンテナの歴史:衛星放送の誕生から4K・8K時代まで

BS/CS衛星放送の誕生の移り変わりの説明

テレビ放送のデジタル化は地上波だけでなく、衛星放送も大きく変えました。ここでは、日本の衛星放送(BS/CS)がどのように誕生し、多チャンネル時代を経て4K・8K放送へと進化を遂げたのか、その歴史とアンテナ技術の変遷を解説します。


1. 衛星放送の始まりと有料チャンネルの登場(1980年代)

🛰️ 放送衛星(BS)の誕生と役割(1980年代)

  • ゆり2号a打ち上げ(1984年):日本初の放送衛星として打ち上げられました。BS放送の最大の目的は、地デジ(当時はアナログ)の電波が届きにくい離島や山間部の難視聴を解消することでした。
  • 本放送開始(1989年):NHK-BS1、BS2が本放送を開始。これにより、日本全国どこでも、パラボラアンテナさえあれば安定した高品質のテレビ視聴が可能となりました。
  • WOWOWサービス開始(1990年):日本初のペイテレビ(有料チャンネル)としてBS衛星を使った放送が始まり、衛星放送の多角的な利用が拡大しました。

2. 多チャンネル時代とデジタル化への移行

1990年代に入ると、通信衛星(CS)を利用した多チャンネルサービスが競争を始め、視聴の選択肢が爆発的に増加しました。

📡 CS放送の台頭と専門チャンネルの増加(1990年代)

  • CSアナログ放送開始(1992年):通信衛星(CS)を利用した専門チャンネル(CNN、MTVなど)が登場。BSが難視聴解消を目的としたのに対し、CSは「多チャンネル」を最大の武器としました。
  • デジタル放送の統合と共用化(2000年代):
    • 2000年:BSデジタル放送が開始。
    • 2002年:東経110度CSデジタル放送が開始。

    デジタル化が進んだ結果、BSと東経110度CSはアンテナを共用できるようになり、一つのパラボラアンテナで両方を受信することが標準となりました。


3. アンテナ技術の進化と4K・8Kへの対応

衛星放送の進化に伴い、受信機であるパラボラアンテナも大きく進化してきました。

🏠 パラボラアンテナの進化

  • 小型化の実現:初期は直径60cm以上の大型アンテナが必要でしたが、衛星の高性能化と技術改良により、現在は45cm~50cmの小型アンテナが主流となり、ベランダへの設置が容易になりました。
  • 三波共用アンテナ:地デジ(UHF帯)とBS/CSを一つのアンテナ(または一つのシステム)で受信できる三波共用タイプのアンテナやブースターが普及し、配線の簡素化が進みました。

🛰️ 4K/8K時代と左旋円偏波への対応

2018年に開始された新4K/8K衛星放送の一部は、従来の電波(右旋円偏波)とは異なる「左旋円偏波」を使用しています。

  • 機器の更新:この左旋円偏波を受信するためには、アンテナだけでなく、ブースター、分配器、分波器といったすべての伝送機器が「左旋円偏波対応」(または3224MHz対応)の最新規格に更新されている必要があります。

4. 沖縄におけるBS/CS受信の特殊な特性

全国どこでも受信できるBS/CS放送ですが、沖縄では地理的・気象的な要因により、特別な対策が必須となります。

🌊 塩害・台風対策の重要性

  • 塩害対策:海岸沿いの地域では、アンテナ本体や金具に耐塩害コーティングが施されているモデルや、ステンレス製(SUS)の取付金具を使用することが、機器の長寿命化のために必須です。
  • 強風対策:台風の多い沖縄では、アンテナが強風で動かないよう、取付金具の強固な固定と補強が、本州以上に重要視されます。

✈️ 基地混信の影響

  • 一部地域では、米軍基地の通信設備から発せられる電波がBS/CS帯域に干渉し、受信障害を引き起こす事例があります。このようなケースでは、ノイズに強いブースターの選定や、専門家による設置角度の微調整が安定受信の鍵となります。

5. 今後の展望:アンテナとIP放送の融合

アンテナ技術は進化を続ける一方で、光回線を利用したBS/CS再送信サービス(IP放送)も普及しています。

  • 光回線による再送信:アンテナを設置できない集合住宅や、悪天候時の安定性を求めるユーザーにとって、光回線を通じたBS/CSの視聴は重要な選択肢となっています。
  • 衛星放送の役割:通信が途絶えがちな災害時や、光回線敷設が難しい離島・山間部への安定供給手段として、衛星放送は今後も欠かせないインフラであり続けます。